君はガラスの靴を置いていく



----------ガコンッ。

ココアのボタンは明日香が先に押した。自販機から出てきた缶を両手で持って冷えた手を暖めている。


『売り切れにならなくて良かったね』

明日香はそう言いながらその場に座った。


『みやさぁ、いとりんの事諦めたの?』


いつも飲み物は「ついでに買ってきて」って言うのに珍しく付いてきた理由はこれか。

あの文化祭以来確かに俺は千花に近付かないようにしてる。とゆーか、そうした方がいいと思って。


『諦めたっていうか全然隙がなくて。だってあの二人上手くいってんだろ?』

あの涙の原因は分からないけど変わらず一緒に帰ってるし、放課後図書室で勉強してる姿を何回か見かけた。


『うーんどうなのかな。いとりん先輩の事なにも話さないし、先輩はしょっちゅう2組に来るけどさ』

まぁ、千花は自分の事ベラベラ喋るタイプじゃないし。あの二人が上手くいってるかなんて二人にしか分からない。


『…………ねぇ、みや。
片想いってけっこう辛いでしょ?』

明日香はココアを一口飲んで少しだけ微笑んだ。


『………うん、だいぶね』


俺に免疫がないだけなのか少しの事で一喜一憂して、なんか疲れてきた。



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