君はガラスの靴を置いていく
その帰り道、俺は自転車に乗っていた。
いつもなら徒歩で帰る生徒がたくさん居るのに少し時間が遅いのか下校中の生徒は数人しか居なかった。
さむ…………。
自転車だと風が直接当たるからそろそろマフラーが必要かもしれない。
『あ、』
前方に見覚えのある後ろ姿を発見した。なんとなく“あれ”以来だし気まずいけど……もう後戻りはしないって決めたから。
----------キキィっとブレーキをかけて自転車を停めた。
『帰りひとりなんて珍しいね』
千花は少しびっくりしたみたいだけど、返事はちゃんと返してくれた。
『うん。今日はひとりなの』
3年は今の時期忙しそうだし特に先輩は受験に向けて猛勉強してそう。だとしたら今がチャンスかもしれない。
『ちょっと話せない?』
『え……?』
いきなりすぎたか?
でも学校だとみんなの目があるし帰りはいつも先輩と一緒だし。かといって家に帰ってから連絡して呼び出すのも気が引けるし。
『……えっと、これから用事があって……』
『用事?』
『うん。隣町の図書館に行こうと思って』
隣町?あぁ、あの駅前の大きなところか。
『これからひとりで行くの?』
『う、うん。ちょっと調べたい事があって。学校の図書室は本の種類があんまりないから……』
待って。これってまじで色々チャンスなんじゃないか?ここで話してても同じ学校の生徒がウロウロしてるし。
困らせるかもしれないけど逃したくない。
『あのさ、俺も一緒に行っていい?』