君はガラスの靴を置いていく




千花はやっぱり困った顔をしたけど『俺も調べたいものがある』ととっさに嘘をついた。


我ながらバレバレの嘘だと思うけど千花は少し考えて一緒に行く事を許してくれた。

多分最初に話したい事があるって言ったからだと思う。


『千花、これ乗った方が早くない?』

千花は歩きで俺は合わせて自転車を押してるけどなんか前に進んでる気がしない。


『宮澤君の自転車だから宮澤君が乗りなよ』

『ってか駅に着いたら隣町まで電車で行くの?
俺チャリだから無理なんだけど……』

『じゃぁ……現地集合……で』


『いや、図書館までの道知らないし』


千花って意外にガード固いんだよな………。
当たり前か。付き合ってる人がいるんだし。


『あの、一緒に自転車乗って行きませんか?って誘ってるんだけど』


無理なのは分かってるけど、先輩が1歩下がるタイプなら俺はその2歩先を進むだけ。

間違ってると言われてもこれが俺のやり方なんだ。


『それはちょっと……』

『でも電車よりずっと早いよ。もし先輩に怒られたら俺が謝るから。だからお願い』

『………』


千花はなかなか「うん」とは言ってくれない。

女子との二人乗りなんて抵抗はないけど千花にとって特別なものだって事は分かる。


『お願い、乗って』


俺がもう1度言うと千花はゆっくりとカバンを抱えて自転車の後ろに乗ってくれた。


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