君はガラスの靴を置いていく



『電話、先輩から?』

帰ってきた千花に聞いてみた。


『うん』

『なんだって?』

『え……よ、予備校終わったって。今図書館にいるって言ったら危ないから駅まで迎えにきてくれるって…』


俺と一緒にいるって言ったんだろうか?

電話短かったしまだ言ってなさそう。まぁ、すぐに報告されても虚しいけど。だって全然意識されてないって事じゃん。


『私この本返さなきゃ……』

千花は2冊の本だけ借りる事に決めたらしい。

医療関係の本は全部が分厚くて、本棚もぎっしり詰まっていた。


『この本はえっと…』とちゃんとあった場所に返すのが千花らしい。俺はさっきの電話の件で少しテンション下がりぎみ。


『そんな上にあったの?』

『う、うん。取った時は足踏み台があったんだけど…』


背の低い千花は精一杯背伸びをしていたけど、
それでも上には届かないらしい。

『……あ、』

俺が手を貸そうとした瞬間、バラバラっと棚の本が崩れて千花の頭上に重たい本が落ちてきた。

とっさに俺は千花をかばうように抱きしめて、
本は全部俺の体に当たった。


『あぶねーっ、つーか本詰めすぎじゃね?こんなに積めたらそりゃ落ちる……』

文句を言いながら俺の腕にいる千花を見ると、

その顔はリンゴみたいに真っ赤だった。


ドキ、ドキっと心臓が聞こえてるのは俺じゃない。


『……あ、ごめんなさい』と千花は慌てて離れようとしたけど、それをもう1度引き寄せた。


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