君はガラスの靴を置いていく
静かな図書館、誰もこない通路。
ドクンドクンとお互いの心音が聞こえている。
ただ怖かっただけかもしれない、
ただびっくりしただけかもしれない、
それでも、もし違ったら………
もしあの赤い顔が俺に対してのものだったら?
そう思って10秒ほど経過した。
『……み…宮澤くん』
先に体を離そうとしたのは千花だった。
分からない、分からないけど、ここで離したら千花は豊津先輩の所に行ってしまう。
『千花』
名前を呼んでギュッと手に力を入れた。
『ど、どうしたの、宮澤君変だよ』
そうだよ。俺は変なんだよ。
ずっとずっと千花を忘れられなくなってから頭がおかしいぐらい千花の事しか考えてない。
『わ、私の事からかってるの?もう大丈夫だから離して』
そっと力を緩めると千花は目も合わさず、落ちた本を拾いはじめた。
『た…助けてくれてありがとう』
感情を隠してるのは千花の方だ。
几帳面なのに本の種類はバラバラだし表紙が上下逆。俺はそれを見て足元に落ちてる本を拾い上げた。
『千花……』
俺が言葉を言いかけると、それを遮るように千花が重なる。
『あ、えっと…体大丈夫だった?かばってくれた時たくさん当たったでしょ?今度は気をつけて戻さないとね』
『……』
『やっぱり無理に高い所に手を伸ばしちゃダメだよね』
あはは、とらしくない笑い方。
早口で喋る千花を止めるように俺は本を拾う千花の手を取った。その脈は不規則に鼓動してる。