君はガラスの靴を置いていく
『な、なに?……宮澤君、女の子との距離が近いから勘違いされちゃうよって前に言ったでしょ?』
『勘違いしてよ』
こんな事、千花以外の人に言わない。
あんな顔しといてずるいのは千花だ。
『す…するはずないでしょ。私は付き合ってる人が居る訳だし宮澤君とはもう……』
『----------千花、聞いて』
俺は千花の手を握り、不自然に動くその目を見つめた。
『俺は千花にひどい事したし傷つけた。だけどもう絶対しない。これだけは信じて欲しい』
難しい事全部なしにして、千花との“この先”を考えていいのならまずは信用してもらわないと駄目だ
『千花、俺は……』
俺が何を言おうとしてるのか千花はいち早く気付き、慌てて拾った本を棚に戻した。
『ごめん、先輩と帰る約束してるから』
まるで逃げるように千花は背を向ける。
『待って。行かないでよ』
『……』
『行くなよ、千花』
指先が触れる寸前で千花は「ごめんなさい」と
その場を立ち去った。
まだ残ってる感触と鼓動。
それだけがポツンと置いてきぼり。
俺はガシガシと頭を掻きながらその場に座り込んだ。
『はぁ……』
これからあの手を先輩が握るんだと思うと……
走って連れ去りたいほどやりきれない気持ちになってた。