君はガラスの靴を置いていく


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気付くと俺は眠っていた。薬の効果なのか熱はだいぶ下がっている。

時計を見るともう夕方で、熱があると熟睡できるという噂は本当だったらしい。ベッドから体を起こすと食欲がなかった腹から獣のうなり声が聞こえてきた。

………そういえば昨日の夜からほとんど何も食ってないんだっけ。


なにか食料を探しに1階へ下りるとピンポーンっと玄関のチャイムが鳴った。


新聞か?それとも母さんがいつも頼む通販の商品?

どっちにしても面倒だな……と思いつつ、玄関を開けた。



『お見舞いです』

そうニコリと立っていたのは何故か悠里だった。


『は?え、なんで?』


新聞や通販商品よりも面倒なのが来たんだけど。
つーか待って。冷静に考えろ。


『なんでうち知ってんの?』

『増田先輩から聞いて。
はい、ブドウゼリーと肉まん』


差し出されたのはコンビニの袋。俺が困惑してるのが馬鹿らしくなるほど悠里は普通だった。


『いやいや、そうじゃなくてさー』

病み上がりの俺は必死に言葉を探していた。


『事前に電話とメールしたんですけど返事がなかったんで』

『あー寝てたし。つーかなに?なんの用なの?』


『だからお見舞いですって。あとは昨日のお詫びです』


それで何もかも理解した俺はとりあえず悠里を近所の公園に連れていった。


本当は悪化しそうだから出たくないんだけど、
家に上がらせる訳にはいかないし。


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