君はガラスの靴を置いていく
『本当は先輩の部屋見たかったんですけどね~』
制服姿の悠里は子供みたいにすぐブランコに乗った。ふわりとスカートが揺れるのもお構い無しに漕いでいる。
『いや、もうすぐ母さん帰ってくるから。そもそも家に来られると困るんだけど』
『あ、私親御さんへの挨拶はちゃんとしますよ?
わりと大人受けはいいので』
『……』
なんだろ、これ。全然話が噛み合わない。風邪のせいで頭が回らないせいか?怒りたいけどそのエネルギーさえない。
『私のせいでなんか大変な事になっちゃったみたいですいません』
悠里がやっとまともな事を言ってくれたけど、
それも少し引っ掛かる。
『いや、だからなんで知ってんの?』
『あの後廊下が騒がしくて目が覚めたんです。
そしたらそこに先輩達がいて』
つまり千花とのやり取りを聞かれてたって事か。
『見られちゃったんですね。私が一緒に寝てる所』
その言い方に若干イラッとした。
寝てたのは俺だしそこへ勝手に潜り込んできたんだろ。あの場は千花じゃなくても誰かに見られる可能性は高いし、悠里は後先考えないバカじゃないはず。
『お前まさかわざとじゃねーだろうな』
味方なのか敵なのか分からない悠里ならやりかねない。