君はガラスの靴を置いていく



怒ってたよ。めちゃくちゃ。

でもあれは俺にってゆーか人として学校で何をしてるんだって目にも見えたし……


『先輩は馬鹿ですね。あれは軽蔑なんかじゃありませんよ』

『……』


『ただの焼きもちじゃないですか』


…………焼き…もち?

千花が?

確かに今まで見た事ない顔してたし口調も早口だったけど……


『だから糸井先輩は不機嫌だったし先輩に冷たかったんです。良かったですね。両想いじゃないですか』


夕焼けに照らされた悠里の顔は逆光でよく見えない。

確かにあれが焼きもちだったら嬉しいけど、また昨日みたいに暴走したくないから可能性だけでおさめておく。


『つーかさ、こんな事わざわざ言いにきたの?』

『はい?』


誘惑ならまだしも寄り添うように眠ってきたり、
らしくない涙を流したり。

お見舞いとか言ってわざわざゼリー買って家を訪ねてくるキャラでもねーだろ。


『むしろ昨日から変なのお前の方じゃね?』


悠里は怖い女だけど無防備な女じゃない。仮に昨日の事が無意識だったとしても何の悪巧みもなく添い寝を求めてはこないだろう。

あの涙だって、簡単に人に見せる奴じゃないのに。


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