君はガラスの靴を置いていく




『先輩って優しいですよね』

悠里はニコリと笑って次はベンチに座った。


『はい、肉まんどうぞ』と俺に1つを渡して、
まだ湯気がたってる内に悠里は一口それを食べた。


『本当にお見舞いとお詫びですよ?まぁ、家に帰りたくないんで先輩が少し時間を潰してくれたら助かりますけどね~』


いつもの軽い口調だったけど、その目はどこか遠くを見つめていた。


『ちょっとだけなら付き合ってやってもいいよ。
だからなんか話せば?』

『はは、なんですかそれ』


相談されるのもするのも苦手同士だけど、悠里の弱い部分なんて見た事ないから興味はある。

『うーん』と悠里は言葉を探し始めた。


『うちの母3回再婚してて、今は3番目の父がいるんですけど1番目の父がお金の事で相談があるらしくて……今日来るらしいんですよね、家に』

ちょっと複雑すぎて一瞬頭にハテナが浮かんだ。


『………1番目って?』


『本当の父親です、血の繋がった。
嫌いなんですよ、私あの人の事』


それはとても冷たく、名前も顔も記憶したくないような言い方だった。


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