君はガラスの靴を置いていく
『勉強じゃなくて、ちょっと調べもの』
難しい本は統一性があって、全て医療関係の本ばかりだった。
『なんで医療系?』
俺はその本を手に取ったけど、まるで外国語みたいに理解出来ない。むしろ本は目次を見ただけで眠くなる。
千花は少し間を開けて、ポツリと言った。
『…………私、看護師になるのが夢なの』
なんとなくそう言った千花が大人っぽく見えた。
夢なんて俺にはないし、それを語る奴も周りに居ない。でも---------------。
『なんか、千花に合ってる』
優しい雰囲気とか柔らかい口調とか、これは本当にそう思った事。
『あ、ありがとう………』
千花は照れ隠しなのか再び本に目を向けた。
俺はその横顔をジーっと見つめ、視線でそれを邪魔してみる。
『み…宮澤君はなんで図書室に?』
不自然に髪を耳にかけて、また一人であたふたしてる。
『千花が居ると思って』
『--------------!!』
どうも千花を見るとからかいたくなるんだよな。
今朝の女の子にはそんな感情湧かなかったのに。