君はガラスの靴を置いていく
渋々体育倉庫にボールを片しに行くと千花と鉢合わせになった。千花もボールを抱えているし同じく片付けにきたんだろう。
……………気まずい。
俺はガシャンとボールを投げるようにカゴへ入れた。でもそれは勢いよく弾んでコロコロと千花の足下へ。
ますます気まずい中、千花はそっとボールを拾い上げた。
『あ、ごめん…』と言おうとした時、先に声をかけてきたのは千花の方だった。
『………具合よくなったんだね』
意外だった。いや、意外過ぎてちょっと戸惑っている。もう完璧に終わったと思ってたし俺からどう話しかけようか考えようとしてたのに。
本当に悠里や明日香が言っていた通り千花の意識の中に俺はいる?他人事ならそういう詮索は得意なのに自分の事だと判断が鈍くなる。
『気にしてくれるんだ。俺なんかの事』
千花の抱えているボールを受け取り今度はちゃんとカゴに戻した。
『気にするっていうか…たまたま昨日学校で見掛けなかったからそれで……』
『あんな事したのに?』
付き合ってないのにキスしようとした。しかも寸止め。普通ならビンタされてもおかしくない。
『あれは…お互いに冷静じゃなかったし私の態度も良くなかったからと思うから』
『………千花はいつもそうだね。俺が悪い事も自分に非があったって言う』