君はガラスの靴を置いていく



千花は優しい。すごくすごく。

でも今回のは優しさじゃない。

この余韻をこれ以上広めないようにしてる。

お互いに探りあってるのになるべく平和に解決しようとして、その距離はなにひとつ変わらない。


俺に足りないのはきっとフラれる覚悟だ。

千花の口から先輩の事が好きだと言われればそれで終わりに出来ると思ってた。だから口を濁して言わない千花にイライラした。

でもそれだって平和的に解決しようとしてただけ。

肝心な二文字は言わずに気持ちだけどこかに置いていけるって思ってたんだ。

 
『……千花。中途半端な気持ちじゃないって言った事あれ本当だから。俺はこんな性格だし色々信用してもらえないかもしれないけど』

『……』


『俺は千花の事………』


場所とかタイミングとかくそくらえ。大切なのは俺が気持ちを言ってその返事をもらう事。

たった二文字を言えばいい。

ずっと秘めていた身勝手なこの気持ちを…………



『あれ~?洋平じゃーん!』

半分しか開いてなかった倉庫の扉が全開に開いて、そこから3年の女子が顔を出した。

俺の鼓動は虚しくも行き場をなくして、ただただため息しか出てこない。


なんなんだよ。空気読めよまじで。

あと1分……いや、あと数秒あれば千花に気持ちを伝えられていたはずなのに。



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