君はガラスの靴を置いていく
『私それを確かめるのが怖かったの。傷つきたくなくて宮澤君の事許すふりをしてた。友達に戻る事だって本当は全然出来てない』
『千花……』
『宮澤君は別れた人でも関係なく友達に戻れるかもしれないけど私は違った。やっぱり意識するし割り切った関係になんてなれない』
当然だ。むしろ友達なんて近付きたい口実でしかなくて俺も千花を友達だなんて思った事はない。
そう言わないと千花との繋がりがないから。だから友達になる気もないのにそう言った。
それぐらい必死だった。
『今だって軽い気持ちで私に言ってるんでしょ?
宮澤君はいつだって本気じゃないもんね』
千花の言葉に俺はピクリと反応した。
『本気じゃない?』
『うん、本気じゃない。宮澤君は誰とだって割り切った関係になれるでしょ。さっきの3年の先輩とだって…』
俺は徐々に距離を詰めて千花を壁のすみへと移動させた。
『割りきってんのはどっちだよ』
千花の前では常に優しい自分でいたかった。
しゃべり方も接し方も他の人とは違う。言いたい言葉も選んで嫌われない自分をいつの間にか作ってた。
“俺は千花に怒られてみたいかも。だってその方が特別って感じがするじゃん?”
“そ、そうなの?慣れてくれば怒る事もあると思うけど………”
ふっと夏に交わした会話を思い出した。
あの頃はお互いに手探りで本音でぶつかる事なんてないと思ってた。