君はガラスの靴を置いていく
喧嘩なんてしたくない。言い合いも本当はしなくない。
でも俺と千花は1度ぶつからないと駄目だ。優しくなくてもカッコよくなくても別にいい。
『俺と別れてすぐ豊津先輩と付き合って切り替え早いのはそっちだろ。いつもいつも楽しそうにしやがって』
『なっ……』
『俺との思い出の物も捨てられずにいるくせに先輩とおそろいのストラップとか付けてるし千花こそどっちなんだよ』
曖昧な態度をとり続けてきたのは俺だけじゃない。
『それを宮澤君が言うのはおかしいと思う。私はフラれた訳だし宮澤君こそなんなの?』
真面目で物静かな千花が恐い顔をしている。あの夏では見られなかった姿。
『その後もずっと宮澤君を好きだと思ったら大間違いだよ。宮澤君は私と付き合った事なんて思い出でも何でもないと思うけど私は初めてだった』
『……』
『だから大切だったし、本当に好きだった』
千花の目からポロポロと涙が溢れた。
『悲しかったよ、すごく。きっと私とじゃつまらなかったんだろうなとか物足りなかったのかなとか色々考えたりして』
『……』
『でもそんな時先輩が言ってくれたの。まだ忘れられなくてもまだ好きでもそれでもいいって。
それでも私が好きだって……』
『千花……』
『それなのに何で私にかまうの?何で私が気になる素振りなんて見せるの?宮澤君はきっと手に入らないものが欲しいだけなんだよ』
千花はそう言って泣きながら体育倉庫から出て行った。