君はガラスの靴を置いていく
午前の授業が終わって昼休み。俺はまだ元気が出なくて食欲もあんまりない。
『あれ、宮澤食わないの?』
『んー。ちょっと飲み物だけ買ってくるわ』
増田とまるを置いて俺は自販機がある食堂へと向かった。
よく女子達が失恋すると食欲ないとか言ってたけど俺は「ふーん」って感じだった。
むしろそこまで恋愛にのめり込む必要はないだろって思ってたし、恋愛なんてたかが遊びだし気楽にやればって冷めた目で見てた。
なんで千花じゃなきゃ駄目だったのか。
たまたま他の女子と違って純粋で真っ直ぐで、俺にはないものを沢山持ってたから惹かれただけじゃないのか?
もしそれが千花じゃなく別の誰かでも俺は恋をしただろうか?
そんな事を考えていると、突然誰かに呼び止められた。
『宮澤君』
その呼ばれ方に一瞬ドキッとしたけどすぐにそれは収まった。
『ちょっといいかな?』
『……はい』
俺を待っていたのかどうかは分からない。
その表情も相変わらず分からない。
ただ分かるのは羨ましいって事。
この場所が欲しくて奪いたくて、
俺はただただ必死だった。
3歩先を歩く豊津先輩は人気のない校舎裏で足を止めた。