君はガラスの靴を置いていく
└片想い
俺は午後の授業に出なかった。いや正確には出れなかった。
今まで感じた事のない高楊感と不安感が入り交じってどうしたらいいのか分からなくなっていた。
終わったと思ってた1%の確率。
明日千花は先輩と別れる。もう何にも気にせずに気持ちを伝えられるのにやっぱりどこかで臆病な自分がいる。
『み~や♪』
そんな迷いを吹き飛ばすように明日香が現れた。
『みやも授業サボり?へへ、私もなんだ~。古典の先生に目付けられてるから逃げてきちゃった』
校舎裏のわずかなコンクリートの上で明日香は膝をかかえた。タイミングがいいのか悪いのか明日香は俺が何かに悩んでいると決まって現れる。
『今日すごい天気いいよね。もう冬なのに日向ぼっこできちゃうし』
他愛ない会話。
なんとなく明日香には気持ちを見透かされてるような気がする。案の定、ぽつりぽつりと明日香が問いかけてきた。
『みやっていとりんを好きになってから変わったよね』
『変わった?』
『うん、変わった』
具体的に言わない所が明日香らしい。
こっちから聞いた所で「色々と」とまたモヤッとする返事が返ってくるのは分かってるし、こういう時は次の言葉を待った方が早いと学んだ。
女友達なんて勝手に出来て勝手に去っていくものだと思ってたけど、明日香とはなんだかんだ腐れ縁に近い気がする。