君はガラスの靴を置いていく



話したいと思えば思うほどタイミングは合わなくて2組を覗いても千花の姿はない。

明日香は学校に来てるって言ってたけど。

気まずくて会いづらい時にはばったり鉢合わせしたりするのに本当に運がない。


渋々自分のクラスに戻ろうと方向転換した時、
誰かの頭が俺の胸に埋もれた。

『『あ、ごめん……』』と声が重なりハッとした。


この背丈とこの声は……


『ち、千花』

思わずため息のように声が出てしまった。


『宮澤君……』

無視される展開は回避できたとしてまずはどうしようか。


千花とは体育倉庫以来だし仲直りはいまだに出来てないけど。つーか今渡り廊下から走ってきたよな?

あっちには上に行く階段があるし、もしかして先輩に会ってたのか?

千花の手に持たれた携帯を見るとそこにおそろいのストラップは付いてなかった。

時間ギリギリで戻ってくるって事は詰めた話をしてたって事だよな。って事は………


『千花、あのさ…』と声を出した瞬間、今度は授業のチャイム。ことごとく邪魔が入る。


『……な、なに?』

千花は少しだけ待ってくれていた。


『午前の授業が終わったらちょっと話があるんだけどいい?』

そもそもこんな廊下で告白する気なんてない。


『話…し?』

『うん、2組に迎えに行くから』

『え、あ。でも……』

『とりあえずなに言われても行くから』


バタバタと授業の壁に負けてしまったけど約束っぽい事はできた。半分力任せだった事は置いといて。


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