君はガラスの靴を置いていく



それから3時限だけの授業はあっという間に終わった。もちろん内容はほとんど頭に入ってなくて居眠りすら出来なかった。

『ねぇ、どこ寄ってく?お腹すいた~』
『カラオケ行こう。今からなら割引利くし』

みんな午後から遊びに行くのか帰る足取りが早い。

2組に行くともうほとんどの生徒は残ってなくて真面目そうな人が本を読んでるだけ。

千花はカバンに教科書を入れていてノートをパラパラと確認しているところだった。


『千花』

声をかけるとその目はすぐに離れた。

千花はそっと髪を耳にかけてノートを閉じた。
お互いに不自然なのは変わらない。


『あ、えっと……体育倉庫ではごめん。あの後変な噂もたって迷惑かけたよね』

千花の前だといつも戸惑う。心がソワソワして平常心ではいられない。


『どうして宮澤君が謝るの?噂は誰かが勝手に流したものでしょ?』

『でもさ』

『宮澤君と同じで私にも良い友達がいるから平気だよ』


千花はそう話しながら時計を気にしていた。

もしかしてこの後予定があるのかな?つーか先輩と別れたのかどうかさえ分からない。

いいやもう。グタグタ考えてたって始まらない。



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