君はガラスの靴を置いていく
『直球に聞くけど先輩と話した?俺聞いたんだ。
二人が期限付きの付き合いだったって』
『……うん。先輩から宮澤君に話したって聞いた。
だから今日で付き合うのは止めようって言われたよ』
千花は少しうつ向いていた。
そのテンションの低さはなんなのか。先輩と別れた事がショックなのか、それとも俺に知られた事が嫌だったのか、その心境は読み取れない。
『……先輩に言われたの。私の好きにしていいって』
ドキッと心臓が鳴る。
『私の本当の気持ちを優先してって。それでちゃんと決めて欲しいって』
千花の目には迷いが見えた。落ち着きがない手がそれを表している。
『今日これから委員会の集まりがあるんだけど、
もしまた付き合う気があるなら「俺のところに来て欲しい」って言われた』
『……』
『今度は期限付きじゃなくて、本当の彼女になって欲しいって』
千花が自分の中で処理をせずに俺にこうして話してくれるのはきっとその選択肢の中に俺がいるからだ。
それはどのくらいの確率でどのくらいの大きさなのかは分からない。
消えてしまいそうな小さな可能性でもいい、
それが消えずにまだ残っていただけで俺は幸運だし、諦めずに片想いして良かったって思うよ。