君はガラスの靴を置いていく
『まるでゲームみたいに女子を落として自分の手のひらでもてあそぶ。それがたまらなくかっこ良かったんです。でも今の先輩はつまらない。ただの普通の男って感じです』
悠里はそう言って俺とは逆方向に歩き始めた。
『もしフラれても私はもう相手しませんからね。
まぁ、先輩がやさぐれて以前のように戻ったら考えてあげます』
『なんだそれ』
悠里らしい皮肉。
悠里の背中は背筋が伸びて、すごく凛として見えた。
『悠里、お前にもいつか出来るといいな』
─────「でも知ってます?相手の事が本当に好きなら、退屈な事も興味がない事も合わせるのは苦痛じゃないらしいですよ」
「私達には無理ですね。だって誰も好きになった事がないでしょ?先輩も」
いつか交わした言葉をふっと思い出した。
こんな俺でも変われたんだからいつか悠里にも
そんな日が来るかもしれない。
本当に好きな人が現れたら必ず。
悠里はただ何も言わずニコリと笑って去っていった。