君はガラスの靴を置いていく



俺はいつもよりゆっくりと自転車を走らせた。

今までの事を振り返りながらあの神社へ。

ただ見回りの先生にバレないように見つけたサボりの穴場がまさかこんな大事な待ち合わせ場所になるとは思わなかった。

鳥居を抜けて中に入ると冷たい風は周りの木々のおかげで治まっている。

もう季節は冬なのに四つ葉のクローバーは生き生きと沢山揺れていた。俺は建物の少し段差がある所に腰掛けて息をはいてみた。

それは白くてまるで煙りのように消えていく。


千花が俺を好きな時、俺は千花が好きじゃない。
俺が千花を好きな時、千花は俺が好きじゃない。

もしかしたら俺達はまだ同じ気持ちを重ねた事がないのかもしれない。


恋愛も彼女を作るのも簡単だって思ってたのに、
全然簡単にはいかなくて追いかけるのがこんなに苦しいと知った。

どんなに努力してもどんなに想っても交わらない。

こんなに一方的な恋愛を自分がするとは思わなかった。


千花が俺を選ばなくても後悔はしない。

悔いは一生残るけど、それでも俺は全てぶつけて全てやりきったから。

俺はいい男じゃないし千花を幸せに出来るのは先輩だと思う。


でももし、

もし千花がガラスの靴を置いて俺を選んでくれるなら………



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