君はガラスの靴を置いていく
確かに俺達は違った。
何もかもが違いすぎた。お互いに今あの日々を思い出してる。
「1ヶ月神話継続じゃん」そう笑われたあの夏の短い付き合いの事を。
『宮澤君は恋愛経験豊富で女子との接し方にも慣れてて、だから何も知らない私じゃダメだったんだって思った』
『……』
だめだった。
最初はすごく満たされていたけどそれは徐々に薄れた。
薄れたから「あぁ、やっぱり千花とは合わなかった」ってそれだけで済ませようとした。
『だから同じ目線の先輩に安心したし付き合うってこういう事だったんだって知った。同じ歩幅で肩を並べて歩いていけるって思ったし宮澤君には常にあった不安感もなかった』
『……』
そしてゆっくりと千花の瞳に俺が映る。
『先輩を選ぼうって思ってた』
さっきまで吹いていた風がピタリと止んで、まるでウェーブのように波打っていた四つ葉のクローバーが静寂になった。
『私はもう傷付きたくないし、苦しい思いもしたくない。だから宮澤君のダメな所ばかり考えて嫌いになろうって思った事もあった』
『……』
『だからこうしてここに来ちゃった事、今もどう説明したらいいのか分からない』
千花は溢れそうになった涙を人差し指で拭った。