君はガラスの靴を置いていく




明日香はぬいぐるみを抱きながら、そのまま後ろのベッドへと倒れこんだ。

そしてため息をつきながら天井を見つめる。



『もっと、焼き付けておけば良かったな。楽しいとか好きとかその時の感情だけじゃなくて』


これは独り言なのだろうか。俺にと言うより自分に言い聞かせてるみたい。


『ちゃんと忘れないように焼き付けたら多分、寂しくない。きっとみやに対してもけじめが付けられるのに……』


ぬいぐるみに顔を押し付けて喋ってるせいか、聞き取りにくい。でも明日香が何を求めているのか俺には分かる。



『じゃぁ、けじめが付いたら俺の事も諦めるし、
学校にも来るし、友達として今まで通り出来るって事?』


『………うん』


明日香の小さな返事が返ってきた。


本当は明日香との事なんて簡単切れる。その後どうなろうと俺には関係ない。

でも明日香は俺の友達と友達だから。


俺が切れば今まで通りって訳にはいかない。俺が居れば明日香を誘えないし、明日香が居れば俺を誘えない。

俺達の問題なのに、今後あいつらに気を使わせられないだろ。



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