夜想曲
その日は、家に帰ると、まっすぐに自分の部屋へ向かった。クッキーが入っていた缶の中に、カセットテープがしまってある。10本くらいしかないのだが、どれも、好きな曲
だ。ピアノの先生が年に一度、発表会の後に、プレゼントしてくれるのだ。
 そのなかでも、お気に入りの、何曲かをテープに録音した。テープがくるくる回るのを見ながら、音楽を聴いた。曲の終りに、停止ボタンを押さないといけないから気が抜けない。途中、夕食をとったので、作業は中断した。しかし、迷いながら、選びながらの作業は、気がつくと22時を回っていた。好きな人のために、費やす時間はあっという間に過ぎてしまう。頭も、よく使ったので、いつもより、頭が軽い感じで、よく眠れそうだ。
 コウジには、感じてもらえるだろうか。音楽の表現する、せつなさや、苦しみや、よろこびを。わたしの、感じている、この感情を、わかってくれるだろうか。
 そして、音楽によって、涙があふれてきて、今の自分が不安でたまらなくて、だれもいないことをいいことに、一人で思う存分泣いた。
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