年上の男


「うわっ・・・」

車のエンジンが掛かったと同時に窓を開ける。

「少し暑いけど、座って」

「・・・はい」

俯いて助手席に座る。

ここに座らせてもらうのも最後なのかな。


少しすると、エアコンが効いてきてちょっとだけ涼しくなった。

矢崎さんが窓を閉める。

「送っていくから・・・」

「・・・・」

何も言わない私に

「具合悪くなった?」

覗いたその顔は、心配してくれてるのがわかる。

「・・・・いえ・・・」

返事をした途端に涙が溢れて。

やだっ。

なんで涙なんか・・・。

ワンピースをぎゅーッと握り締める。


「そんなに楽しみだった?夏祭り」

夏祭りが楽しみなんじゃなくて。

「矢崎さんと」

「俺?」

「一緒に出かけたかったから」

小さな小さな声の、私の最大の勇気。

それだけ言うと、また涙が溢れて。

「・・・ぐすっ・・・」

鼻をすすると

「はい」

ティッシュを渡してくれた。

「ありがとう・・・」

「送るね」

それだけ言って、車を走らせた。






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