年上の男


「あ、あの、お母さんが名詞を一枚いただけないかと・・・」

私の言葉に少し驚いたようだったけど

「わかりました。・・・・はい。またよろしくお願いします。と、お伝えください」

高校生の私に、丁寧に言って渡してくれる。

名詞には 主任と書かれていた。

「主任さんなんですか?」

「あ、はい・・・でも、肩書きだけですけど」

ちょっと照れたように笑う矢崎さんが、可愛い人だな・・・と。

私より年上に向かって可愛いとは、失礼かな。

「あの・・・おいくつなんですか?」

何て事を聞いているんだ・・・私。

「え・・ああ、今年25になります」

25才・・・大人だなぁ。

なんて感心してると、逆に私も質問された。

「あなたはいくつなんですか?」

「・・・17才です・・・」

「え・・・高校生?」

「あ、はい。2年です」

「そうですか・・・すみません」

「え?」

「奥さんですかとか・・・」

「ああ、いえ。年の割には大人っぽいと言われることがあるので・・・・気にしないでください」

「そうですか?」

「はい」

なんだか和やかな会話だな・・・なんて思ってたら

「秋仁さん、行きましょうか」

今までお母さんと話をしていた織田さんが、車に戻ってきた。

「・・・おぅ」

矢崎さんは、返事をした後、私をみて

「では、またよろしくお願いします」

丁寧に頭を下げて車に乗り込んだ。

「ありがとうございました」

私もお礼を言う。

それにあわせるかのように、車の中で頭を下げると、車は発車した。


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