年上の男
車が見えなくなるまで、私はその場に立ち尽くしていた。
名詞は別にお母さんに頼まれたわけではない。
私が欲しかったから。
一目惚れなんて、そんな大層なことではないけれど・・・気になる人ではあった。
「矢崎 秋仁さん」
私は名詞に目をやる。
また、会えるかな。
でも、こんな仕事の人・・・ムリだよね。
「柊子~」
家の中からお母さんの声が聞こえて。
「は~い」
私は返事をして、家の中に入った。
高校2年の夏休み。
これが彼との最初の出会いだった。