雪月花~死生の屋敷
色武に聞かれた私には、当然心当たりがあった。

「孝也…」

最近私の元を永遠に去った愛しい人。私には孝也以外の心当たりはない…。

「心中お察しします。おそらくその孝也さんはすでに亡くなられている方なんですね?」

「はい…」

そう。孝也は死んでしまった…。

私を置いて居なくなってしまっていた。

「話しが見えてきましたね。どうやら孝也さんは、雪月花に居るのだと思います…」

「孝也が…雪月花に」

あの化け物屋敷に孝也が居る。でも…。

「根拠は?」

孝也が居る根拠がわからない。孝也は私の恋人で、私の事を大切に思ってくれていた。

でもそれが理由で、孝也が雪月花に居る理由にはならないと思う。

「それは成海さんがこの場所に居るのが理由でございます。それ以外に成海さんが雪月花に来れる理由がないのです…」

理由がない?

「雪月花に来る方法は二つだけです。一つは死して切に語りたい事がある霊魂…もう一つは、その霊魂が語りたい人を雪月花に直接呼び込む事です。その場合、その相手が霊魂の思いを受け入れる姿勢がないと無理なんです。成海さんは孝也さんにもう一度切に会いたいと思っていたはずです…違いますか?」

「違わない…私は孝也に会いたいです」

孝也にもう一度会いたい。会話をしたい。

「そうですか。なら間違いなく孝也さんは雪月花の中にいます。そして成海さんを待っていますよ…」

色武は優しい笑顔で私にそう答えた。孝也にもう一度会える。

私は自然と涙が浮かんできた。
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