雪月花~死生の屋敷
「おやおやっ。女性の涙を見てしまうと、私も協力したくなってしまいます…私は成海さんのお役に立つ為に、この場に居るのかもしれませんね」

一人涙を流していた私を見た色武は、静かに立ち上がるとその場から居なくなる。

そして戻ってきたかと思うと、一つの箱を持ってきた。その箱を開けた色武は中身を取り出すと、目の前のテーブルにそっと数珠を置いた。

「これは死した霊魂に化ける事が出来る数珠にございます。これを着けていれば、悪い霊魂に無下に襲われる心配はございません…孝也さんに会いに行かれるのでしょう?」

色武の言葉に何度もうなずく様に答えた。言葉が出ない…だって孝也に会えるのだから。

「そうでしょうそうでしょう。成海さんは、孝也さんに会うべきでございます…ですが一つ気をつけなければいけない事がありあす」

「はい…」

どんな危険も覚悟のうち。私は孝也に会えるのであれば、どんな覚悟も辞さない…。

「雪月花の中には、強い力を持った霊魂もいます。あまりに強い力を持った霊魂には、この数珠もあまり効果がありません…最悪身体を支配されてしまう事があるのです」

「支配されるとどうなるのでしょうか?」

「身体を支配された場合、成海さんの霊魂はその霊魂に食われてしまいます。その場合、永久にその霊魂と雪月花を彷徨う事になります…」

そんな…。

「それとこれは少し残酷な事かもしれませんが一つ覚えておいて下さい。雪月花に行けば、孝也さんに会い事は出来ると思います。ですが孝也さんは決して生き返る事はないと言う事だけは肝に銘じておいて下さい。死した身体は二度と生き返らないと言う事を…」

孝也に会う事は出来る。でも孝也が生き返る事はない…。

「でも成海さんは孝也さんに会いに行きますよね?私には解ります…生半可な気持ちでは孝也さんの思いを受けて、この雪月花に足を踏み入れる事など出来ませんから」
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