雪月花~死生の屋敷
私の言葉にユキちゃんは、少し照れた表情を見せると、私の胸元にしがみつく事で意志表示を示した。私はそんなユキちゃんに笑顔を返すと、抱っこしたままユキちゃんの示す方向に歩いて行った。

この時私は思う。ユキちゃんが強大な力を持つ霊魂だから何だと言うのだと…。

強大=凶悪とは限らない。私は雪月花に入る前に、変な固定概念があったのだ。強大な力を持つ霊魂はその力を誇示し、災いをもたらす存在だと…。

そしてそれは、間違いだと気づく。先ほどのユキちゃんのした魔法の様な事象を考えると、ユキちゃんは凄い力を持った霊魂なのかもしれない。

けど素直で可愛くて、凶悪とは正反対な霊魂なのだ。それが事実で何が悪い…ユキちゃんは私の味方で、私もユキちゃんの味方なのだから。

ユキちゃんの案内で私は通路を進んでいく。すると今まで姿を現さなかった霊魂の姿が、私の目の前に広がっていた。

凄い数の霊魂がいる。それこそ日本人だけではない…みんな色が白い肌をしているものの、骨格がアジア系の顔ではない人も多かった。

そんな霊魂達は、多い人数で10人ほどの集団で行動をしているようで、通路に座り込んでいる者も居れば、ゆっくりと通路を歩いている者も居る。

だがここに居る霊魂達には一つだけ共通点があった。それは私の姿を遠目に凝視している事だった。

何かしらの異変を私から感じているのかもしれない。特別私に声をかけてくる事などはないが、私の姿を異様な目つきで見てくるのだ…。

それが何とも言えない不気味な視線なのです。悪意があるのかないのか判別しにくい視線。それに感情を逆なでするかの様な、醜い笑顔を浮かべる男性も少なくない…。

正直凄く怖い。今までの人生で暴力などを振るわれた経験がない私にとって、男性の暴力的な一面を垣間見た経験がないからです。
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