雪月花~死生の屋敷
初心な年頃という訳ではない私ですが、孝也しか知らない私にとって、男性とは優しく強い存在。ここまでの注目を集めた経験もない私にとって、この視線は耐えがたいものでした…。

出来るだけ霊魂を避ける様に通路を通ると、かなり開けた場所に到着した。その場所は、とても不思議な作りをしていて、大きな円柱の中に居るかの様な錯覚を覚えるほど、丸い空間だった。

そしてその丸い場所は、バリアフリーの様に上に登れる様になっており、どこまでの続きそうなほど、長い道が広がっている…。

「ここを上るの?」

ユキちゃんは顔を私に向けると、一つ小さく頷く。

「この先に何があるの?」

ユキちゃんは、少し考えた後、ポツリと言葉を述べる。

「…時計があるの。大切な時計」

「時計??時計ぐらい私も持ってるわよ?」

すっかり忘れていたが、携帯電話と言う名の時計なら私は持っていた。普段から連絡を取る時ぐらいしか使わないので、存在を忘れていた物。

私はポケットに締まっていた携帯を取り出し、ディスプレイを開いた。

「あれ?時間が…止まってる」

電源も着いているし、電波も何故か来ている。けど時間は止まったままになっている。

午前10時32分24秒。この瞬間で時間は止まっていた。ユキちゃんは私の腕の中から携帯をのぞき見る。

「なにこれ?」

「これ?携帯電話だよ?ユキちゃんにはまだ解らないかしら…」

小学生にも上がる前なら、仕方ないかな。でも存在ぐらいは知ってそうなものだけど…。

「知らない…でもこれ違うの。時計じゃないの」

時計じゃないか…。確かに携帯を知らない子に、これが時計だと説明しても納得が出来ないかもね。
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