雪月花~死生の屋敷
私の持っている携帯の時間機能が壊れているのなら、時間を確かめるのは確かに重要かもしれない。それにユキちゃんが案内したいらしい時計の場所にも興味が出てきた…。

私はこの無限に広がっているのではないかと思う、螺旋状のドームを上る事にした。

それなりの間隔があるこの通路。勾配もそれほど急ではないのだが、いかんせん距離が尋常ではない。ない物ねだりになるのだが、車があったらどれだけ楽が出来るかをどうしても考えてしまう。

もし私が一人でここに来たとしたら、間違いなくこの場所を引き返していただろう。

だって目の前に富士山があるからと言って、登山が目的じゃない人が山を上る訳がないじゃない…それに頂上が解らない分、富士山よりも厄介かもしれない。

そんな事を考えながら道を進んでいると、私の胸の中に居るユキちゃんは、小さな寝息を立てて、眠り始めていた。そんなユキちゃんの寝息や寝顔を見て私は、歩くペースを少しゆっくりなものにした…。

こんなに穏やかな寝顔を騒音で起こしたくないし。タダでさえこの場所は足音が響きやすい様な作りになっているのだから。

ゆっくりと足を進めながら、私は昔の記憶に思いを巡らせた。振り返ると楽しかった記憶が私の頭の中で、穏やかな時を刻んでいる…。




あれは…私が中学生のころ。

好きな人が出来たら、友達に相談するのが仲の良かった女子の間での決まり事だったの。その頃の私は、外見が格好良い人だったらすぐに好きになっていた気がする…。

今でもそれは変わりない様な気はするけど、昔は今よりもっと凄かった。一度に2、3人の男性を好きになった時期もあったぐらいだし。

そんな時期に私は、一人の男性が気になり始めてた事を友達に相談したの。

名前は竜也君。バスケットをしている姿に一目ぼれし、その日から目が離せなくなった男性。

バスケ部だった事もあったのだろうが、シュートを打つと綺麗な放物線を描きながらシュートを決める姿は、私の眼を釘づけにした。
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