雪月花~死生の屋敷
そして孝也は帰らぬ人になりました。

トラックのオジサンは、私と孝也の両親に泣きながら土下座をして謝りました。でも私は、初めからこのオジサンを責める気はありませんでした。

だってオジサンは私たちを本気で助けようとしてくれたから…。

自分の責任を全うしてくれたから。謝罪をしてくれたから…その気持ちを持ってくれているのであれば、私はオジサンを責める気にはなれなかった。

一番許せないのは、私自身…私は私を許す気にはなれない。

孝也を一人で逝かせてしまった私が許せない。孝也の居ない世界で生きるのは辛い…どうせなら一緒に…。

一緒に逝きたかった。






ココはどこ?

何で…暗いのに明るいの?

何で…雪があるのに寒くないの?

それにこの空気…とても清んでいるのに重たい感じがする。

私は目の前の景色を前にして、こんな事を思った。どうして私がこの場所に居るのかが分からない。気がついたらこの場所に居たから…。

私の目の前にあるのは、古い和風の屋敷。木造の作りなのだけれどもとても大きく、かなり建物とは離れた位置に居るのに、建物の全体像が分からないほど大きい。

私の背後にあるのは、広大な森林。緑が生い茂る木々には雪が綺麗に降り積もり、小さなきっかけでその雪は、中に舞うであろう粉雪である。

当然私の足元には雪が浅く降り積もっている。だけど、その雪の隙間からは雪の様に白い花が咲いていた。

種類は解らないけど。とても綺麗な花たち…。そして不自然すぎる光景。
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