伸ばした手
またまた、彼女の顔が赤くなる。
いつもは表情を崩さないのに
俺の一言でこんなに変わる、
可愛い彼女が好きだ。
……って俺、いつも
こんなにベタな言葉、
言わないのにな。
「皮肉のつもり?」
「んー、褒めてるんだけどな」
そんなことを言ってたら、
彼女の家の前に着いてしまった。
「ちぇっ、もう着いちゃったよ」
「ばいばい」
「うん、ばいばい」
俺が彼女に背を向けて歩きだそうとしたら、
腕に抵抗を感じて、後ろに振り返った。
……俺の制服の腕を
ちょこんっと摘む彼女の姿。
「……ありがと」
「へ?」
俺が思わず聞き返すと、
彼女は震えながらこう言った。
「送ってくれてありがとッ!!」
ムキになってそう言う彼女の姿が、
物凄く愛しく感じて、
俺は思わず彼女を抱き締めた。