伊勢物語 ~狩りの使ひ~
*斎宮side*
「斎宮様。」
私が、夕方のお務めの支度をしていると、先程、例の"狩りの使い"の迎えに行かせた花が戻ってきた。
「あら、花。わざわざ、迎えになんか行かせてごめんね。」
「いえ!!!」
花は、首をブンブンと横にふった。
「...ところで。どんな感じだった?"狩りの使い"?」
―正直、ここのとこ、このことばかり考えてたのよね...。ダメだわ、私...。
花は、うーん、と考えるようにして言った。
「...なんか、想像と違いました。」
「え?」
私は思わず、変な声を出してしまった。
「先日、斎宮様と『嫌なカンジだろう。』とお話していましたが、全然そんなカンジはありませんでした。」
「あら....。」
「神宮からこちらへ来るときも、ずっとお供の者にも気をかけていましたし、私がここまで案内すると、『かたじけない』とちゃんと言ってくれました。今までの"狩りの使い"だったら、絶対そんなことありませんよ?むしろ、当たり前だと思ってるみたいですし!!!!」
花は、プッーと膨れっ面をしてみせた。