褪せない花
高層ビルが立ち並ぶ中の、申し訳程度に残された山。
人里離れたその場所に、1人の男が住んでいた。
彼は名をイズナという。
年のころにしてみれば10代も後半、少年と青年の境目に位置する年齢。
そんな彼には、1つの生きがいがあった。
ドン!!!
耳をつんざく爆発音、立ち上る白い煙。
辺りに広がる熱風。
「くそ、また失敗したか…」
独り言をボソボソつぶやきながら、額に浮かぶ汗を拭う。
普通にしていれば相当格好いい容姿は煤(すす)にまみれ、サラサラの黒髪は熱風のせいで焦げる一歩手前だった。
次の準備に取り掛かっているとき、ドアをガンガン激しく蹴る音がした。
「おぅ、今開けるから待っとけ」
言い終わる前に、
「待ってられるか!」
と甲高い声がして、ドアが独りでに開く。