褪せない花
泣きはしなかったけれど、あと一歩で涙腺は決壊しそうだった。
人差し指を立てて呪文を唱えれば、そこに生まれるのは小さな花火。
彼はこれを嫌った。
魔法を否定していた。
でも私は、人の手で造られた花火を見たことが無い。
花火大会と言っても、打ち上げられるのは手間のかからない魔法でできた花火。
それが当たり前だと思っている。
アスカだけでなく、この時代の者はみんな。
だから正直言って、イズナの考え方を古いと思った。
けれど、見てみたいとも思った。
彼が肯定する、人の手で造られた花火を。
どれだけきれいなんだろうとも、想像できない頭で想像してみた。
今だってそう。
彼の花火を見てみたい。
その気持ちは変わらない。