褪せない花


泣きはしなかったけれど、あと一歩で涙腺は決壊しそうだった。

人差し指を立てて呪文を唱えれば、そこに生まれるのは小さな花火。
彼はこれを嫌った。
魔法を否定していた。

でも私は、人の手で造られた花火を見たことが無い。


花火大会と言っても、打ち上げられるのは手間のかからない魔法でできた花火。
それが当たり前だと思っている。
アスカだけでなく、この時代の者はみんな。

だから正直言って、イズナの考え方を古いと思った。


けれど、見てみたいとも思った。
彼が肯定する、人の手で造られた花火を。

どれだけきれいなんだろうとも、想像できない頭で想像してみた。

今だってそう。


彼の花火を見てみたい。
その気持ちは変わらない。


< 24 / 39 >

この作品をシェア

pagetop