褪せない花


彼女の肩をつかんで揺さぶると、いつになく細々とした声がゆっくり耳に届いた。


「ひっく、う、やだぁ、やだ、よぉ」

「何が嫌なんだ?」

イズナには、全くもってわけがわからない。
問いただしてみると、


「やめないで、お願い。ごめ、なさい。イズナ、ごめ…ん、なさぁい」

強気な彼女が見せた、なんて弱々しい一面。
こんななき方をする人だったのか、と頭の片隅でうっすら思った。

「やだ、見たいよ。私、イズナの花火、見たいよ」

子どものようにしゃくりあげるアスカの肩を抱きながら、ん?と首を傾げる。
理由を聞いても、彼女がなんで泣いているのかよくわからない。

これはあれか、俺の国語力が足りないのか?


「落ち着けよアスカ。ゆっくりでいいから」

声の調子を和らげてそっと続きを促すと、彼女は鼻をすすりながら自分の胸に顔をうずめてきた。
不覚にも、いや不覚じゃないかもしれないけど、ドキドキしてしまう。


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