褪せない花
イズナが頭をかきつつため息をつき、
「…どちらさまで」
雰囲気からして自分とそれほど年齢が変わらない少女。
けれど何分背が低いもので、自分よりもだいぶ幼く見えた。
少女は腕組みをしてイズナよりも大きなため息をつき、大声で怒鳴り始めた。
「最近引っ越してきた、あなたの隣の家の者です!あのねぇ、毎日毎日ほんっと迷惑なんだけど!!」
「落ち着けって。近所迷惑だろ」
「あんたの方がよっぽど近所迷惑よ!!いつも何やってるわけ!?」
彼女が落ち着いてくれそうな気配は当分なく、イズナはしかたなしに黙って彼女の説教を聞いていた。
最初にも言っていた通り彼女はこの隣に住んでいる人で、毎日この爆音のせいで困り果てているという。
朝には爆音で起こされ、昼には立ち上る煙にむせ、夜には漂ってくる熱風でうなされっぱなし。
それを聞くとイズナも、謝らずにはいられなかった。
「あー…。それはそれは、どうもすいません」
「本当にね」
怒気をいっぱいに含んだ冷たい声に、身が縮む。
自分のことしか考えていないイズナのことだ。
それほど迷惑だとは思っていなかった。