褪せない花


「だって、この前から夜がすごく静かで、いつものうるさい音がしなくて。イズナが、私のせいで花火を造らなくなったかと思って…」

あぁ、この前の花火玉破壊事件の話か。
あれにはさすがの俺もびっくりした。


「イズナの花火が見たいよ。なのに私、最低のことをした」

その場の怒りで彼の邪魔をするなんて、最低だ。
だからこそ、こんなにも苦しかった。
あんなに目を輝かせて花火の話をしていた彼が、もう見れないかもしれないと思うと。

「ごめんなさい。イズナ、イズナ、イズナぁ…っ」

何度も何度も、「ごめんなさい」と「イズナ」を繰り返して、ようやく彼女のすすり泣きはおさまった。

それを確認してから、胸の中でおそるおそる自分を見上げてきた彼女に笑いかける。


「アスカ。俺は、怒ってないよ」

彼女の頬が、赤みを帯びる。
なんでかまた目を潤ませた彼女におろおろしていると、

「それが嫌なの」

そらすことのない、まっすぐな視線がイズナを稲妻のごとく貫いた。
それはなんだ、狙ってやってるのかと問い詰めたい。

「怒らないから、不安だったよ…」


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