褪せない花
じゃあ怒ったらよかったんだろうかと思うが、それはまた違うと思う。
だって、彼女の気持ちもわかるから。
「ごめんな…」
彼女の首に顔を埋めると、ほんのり甘い香りがした。
花火の匂いとは似ているところがないだろうに、どうしてか花火を彷彿とさせる香りだった。
「図案を取り上げたから、怒ったんだろ?」
何の悪意もなく見ようとしたものを取り上げられたら、怒りもするだろう。
粉々になった花火玉を見つめながら、あの事件の後でひたすら後悔した。
彼女の吐息が震えて、その後にゆっくりとうなずく。
「イズナの花火を見るのが、楽しみだったよ。なのにあんな風に怒鳴られて、関係ないって、言われた気がして…」
あーあ、また泣かせた。
なんでこう俺は、うまく言葉が出てこないかな。
「ふえぇ…」
それから。
なんでこう…急にか弱くなるかな。
どうしていいかわからなくなる。