褪せない花


連れてこられたのは、イズナの家の裏側。

花も何も植えられていない庭はとても殺風景だったけれど、その中央に一際存在感を示す物体があった。
それを指差し、

「何これ?」

と訊ねてみても、彼は答えない。

「まぁ見てろって」


いつも以上の晴れ晴れしい笑顔に見とれていると、

「俺は、魂を込めてこいつを打ち上げる」

「え―― 」



ヒュルルル……


一瞬何の音かわからなくて、でもそれを次の瞬間に視覚が精一杯補ってくれた。


ドン!!


あぁ、泣きそうだ。
泣いたら、彼は困るんだろうに。

初めて見た、一から人間が造った打ち上げ花火。
その中心には、







の一文字。







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