褪せない花
イズナは今の世の中が大嫌いだった。
みんなが何かに頼りっぱなしで、楽することしか考えていない。
どれだけ科学が発展しても忘れてはいけないものを、みんなは忘れている。
そう思ったから、自分だけは。
「俺は、何にも頼りたくないんだ」
自分の力で打ち上げた花火は、さぞかしきれいなことだろう。
そう思うから、信じているから、彼はどれだけ煙たがられようともそれをやめない。
ところが目の前に立つ少女は、イズナの想いを全く知らずにこう言った。
「花火なんていくらでも打ち上げれるじゃん?」
人差し指を立てると、そこには小さな花火が生まれた。
ポスッとかわいらしい音を立ててそれは、小さいながらも華やかな美しさを見せる。
けれどもイズナはそれを許さなかった。
「それがいやなんだよ」
さっきとは打って変わって睨むように彼女を見つめ、その場にドカッと腰を下ろす。
「俺は魔法なんて使いたくないんだ。どんだけうっとうしがられても、そんな花火だけは見たくない」