褪せない花
大きく息を吸い込んで、イズナの気迫に負けないよう声を張り上げる。
「わ…私は、きれいだと思う!」
イズナがむすっとした顔のまま、彼女の方に人差し指を突きつける。
「じゃあ完成したら見せてやるよ、本当にきれいな花火ってやつをな。…あんた、名前は?」
かっこいいことを言っているつもりなんだろう。
実際結構かっこいい。
…こんなに、顔が煤だらけじゃなかったら。
間抜けな顔で格好つける彼があんまりにもおもしろくて、彼女は笑いながら名を名乗った。
「アスカ」
「よっしアスカ。だからもうしばらく騒音は我慢しろよ」
イズナが得意げに言った言葉に、アスカは耳を疑う。
おいおい、今なんて言ったよこいつ。
「いい加減にしてよ!信じらんない!!」
「はぁ?なんでそんなに怒るんだよ」
またこいつのせいで眠れない日々が続くなんて、冗談じゃない。
私は一刻も早く安らかな睡眠時間を取り戻したいのに!
「いいじゃねぇか。きれいなもんが見れるんだから」
にこにこしながら言う彼に、それ以上言う文句もなかった。