赤ずきんっ仔
「“いつわる”って何?」
絵本を読み終わると、里奈がリスのようなクリクリとした目を私に向ける。
「心の弱い人間がすることかな。ま、私くらいの年になったら自然と分かってくるよ」
「絶対?」
「絶対」
私の真剣な眼差しに満足したのか、里奈は次の質問をぶつけてくる。
「えっと~…。あ!!“かくしん”は?」
「ん~…。物事の中心になること…。まだ里奈には難しいかな?」
「うん、難しい…」
里奈はしょんぼりと俯いてしまった。
よほど、理解出来ないのが悔しいんだろう。
「里奈はまだ小2なんだから、しかたないよ。まだまだこれからいっぱい勉強できるし」
天使の輪ができた艶やかな髪を撫でても、里奈のご機嫌はなおらない。
「里奈、お姉ちゃんみたいに頭良くなりたいもん…」
「あせっちゃダメ。ゆっくりじゃないと長く頑張れないでしょ?それに、頭良いのってそれほど楽しいことないんだよ」
「そうなの?」
「うん。授業中はよく当てられるし、宿題をクラスメートにやるように言われたり…。それに親てか先生からのプレッシャーもすごいんだから」
里奈は意外そうに、目をまん丸にさせた。