Canna*
「渡したいもの?」
「うん
ちょっと待っててね!」
そう言うと遥は
車の後ろから何かを
取り出す
「なに―?」
遥は私の前に立つと
私に真っ白い
チューリップの花束を渡す
「はい」
「え?」
「あげる!!」
カスミ草と一緒に
まとめられたチューリップの花束は
とても綺麗だった
「可愛い
遥が花束くれるの二回目だね!」
「うん」
「これどうしたの?」
この島には花屋は
一件しかないはず
「ばあちゃんが
育てて」
「ばあちゃん?」
「そう
ほら、神社の後ろの」
「あぁ和美ばあちゃん?!
遥のおばあちゃん
だったのか…」
「うん」
「それにしても
白のチューリップって…」
「え?
ダメ?」
「いや、だめじゃないけど
白のチューリップの
花言葉って
失恋なんだよね
失恋したばっかなのに」
「え!
嘘!!!!
チューリップって
愛の告白じゃないの?!」
「それは赤」
「…ごめんなさい」
「ううん
でも白のチューリップは
新しい恋って意味もあるし」
「そうなの
良かった
じゃあ多分これから
神流ちゃんと俺の恋が…
「それは始まらない」
「え―」
「早く帰んないと
お母さん帰って
きちゃうから!!
帰るよ!」
「あい…」
へこんだまま遥は
車の助手席のドアを開ける
私を花屋まで
送りだすと名残惜しそうに
帰っていった
私はもう一度開店して
店番を始める
遥からもらった
白いチューリップは
花瓶に入れてレジにおく