Canna*
「和美ばあちゃん―!」
なんだか無性に会いたくなって
私は和美ばあちゃんの
名前を呼びながら
和美ばあちゃんのいる
神社裏まで自転車をこぐ
体にあたる春風が
少しあたたかくて気持ちいい
ちょうどこの季節に
なると春風がモクレンの甘い
香りを運んで来て
小さい頃から
その甘い香りに誘われて
神社の裏までよく自転車をこいだ
今は色々忙しくて
お店の花を仕入れに
1ヶ月に一回来るぐらいだけど
昔はほぼ毎日来てたぐらい
神社裏まではだいたい5分ほどで着く
小さい頃は神社までの
登り坂に苦戦して
20分かかったりしてたけど
「和美ばぁちゃ―ん」
反応が無いから
多分、庭で花のお手入れ
なんかしてるんだろう
と思い
私は庭の方へと行く