Canna*


「名前…」




「あぁ名前!!



ここよく通るんだけど
みんなにカンナって
呼ばれてるから!!



あ、ストーカーじゃないからね?」

慌てた様子で
否定する

…よくしゃべるなぁ
と彼を見ていると


不意に目が合う

「…カンナって珍しいよね


どう書くの?」




「神に流れるで神流」



「へ―



綺麗な名前」





どうやら見たところ
この男はキザで人なつっこくて
泣いてる人をほっとけない
おせっかいで(泣いてないけど)
おまけにおしゃべりで軽いらしい






「あ、ごめん


もう店閉めたいんだよね



帰るね―」



「あ―はい、


さよなら」


あっさり返すと

「冷たい―」とか
言いながら店を出ていく



私はやっと店を閉められると
レジから離れシャッターに手をのばす


しめかけたシャッターは
再びあいつの手によって止められた



「また、きてもいい?!」



そんな事言うためだけに
戻ってきたのか



…変なやつ



思わず笑ってしまう


「ん?何?」

あまりにも私の顔を
じっと見るから
思わず視線をそらす


「…笑った顔可愛い


ていうか!


名前くらい聞いてよ!!」

聞いてよ?

ちょっとおかしいような
気がしたけど
今はそんな事
どうでもいいような気がして
私は笑って答える


「次来たときに聞きます」



「また次きていいんだ?」



「どうぞ

いつでも、


またのお越しを
お待ちしております」



「バイバイ」



さっきとは同じだけど
意味の違うバイバイ




さっきまで聞こえていた
時計の音はいつのまにか
聞こえなくなっていた






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