恋を、拳と共に

男子バレーは女子と違って、どことなくクールに試合が進む。
スパイクのスピードや角度なども女子とは段違いだ。

声を上げて応援するというよりも、
思わず息を詰めて見守る、といった感じになってきた時。

私は、一人の男子が抜きん出て上手なことに気がついた。


―― ジャンプの高さ、高いなぁ。

――返すボールもちゃんとセッターの位置に行くし。

――スパイク、すごい強い。


「…… 何? 茜、なんか言った?」
思わず声になっていたようで、隣にいた千里が聞いてくる。

「ん、あの人、上手いなぁって思って」
私は千里に、率直な感想を告げる。

「あー、秦野くん? 彼、バレー部だよ」
千里は、知っているのが当然と言わんばかりに、その人の名前を口にした。

「あんな上手い人、うちのクラスにいたんだ?」
私は千里に聞き返した。

いつも体育館で練習しているバドミントン部の千里の方が、バレー部の人に関しては詳しいだろう。

「茜は陸上部でいつもグラウンドにいるから、知らなかったんだねー。
1年の時から時々、公式試合も出てるみたいだよ」
やはり千里は詳しかった。

公式試合に出てる、と聞いて、更に見ていると、なるほどそれくらいの力はありそうだ。


その「秦野くん」の活躍もあってか、男子チームも決勝に進んだのだった。


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